小型バス・ジャンボタクシー代替モデル実証実験

小型バス・ジャンボタクシー
代替モデル実証実験

京都市交通局では、市内の各地に路線バスを運行している(ただし山科地区は地下鉄東西線開業時に京阪バスに移管、岩倉地区は地下鉄烏丸線国際会館延伸時に多くの路線を京都バスに移管)。市内中心部や観光地を通る路線は、市民の足以外にも観光需要があり、営業係数も非常に低い。しかし周辺部で運行する路線は、地元民の足としての需要しか無い系統が多く、また市内中心部と異なりクルマ社会でもあるため、交通弱者の利用が大半となり、営業係数が100を大きく超えている。つまり黒字路線で赤字路線を支えていかなければ成り立って行かない。
政府主導による規制緩和で、路線バス事業(高速バスやツアーバスも)への新規参入が全国各地で相次いだ。この時期に京都市内で参入した事業者は、ヤサカバス(弥栄自動車グループ)とセレモニー観光(京都急行バス→プリンセスライン)がある。タクシー会社のエムケイも参入を予定していたが、紆余曲折の末に撤回している。この辺の事情はエムケイ路線バス参入問題で別記事にしているので、参照していただきたい。
エムケイ京都市内の路線バスに参入すると発表した中に、市内中心部は路線バスで、周辺部はタクシーを活用することで、乗客の多い路線と少ない路線を共に維持させるという計画があった。これを発展させた形で京都市長の諮問機関『京都のバス事業を考える会』の最終答申で、京都市交通局の既存路線の一部の運行を小型バス・ジャンボタクシーで行う「代替モデル実証実験」が行われることになり、エムケイもこの実験に参加することで、計画の一部が認められたということが参入取りやめの理由になっている。

実証実験は2005年7月~2008年1月にかけて行われた。途中で実態に合わせて内容の変更があった。

 A.2005年7月~2006年3月 

①16号系統を中型バスから小型バスへ変更
16号系統は設定当初大型車で運行されてたが、中型車のいすゞエルガミオが導入後は専属で運行されていた。しかし乗客数の伸び悩みから輸送実態に合わせて小型車の三菱ふそうエアロミディMEでの運行に変更した。さらに一部時間帯で増発しほぼ毎時2本(30分間隔)での運行となる。担当は変わらず、従来どおり九条営業所京阪バス委託が運行する。エアロミディMEは運行に必要な4台が導入されたが、予備車は含まれておらず、エルガミオを一部残した。余剰となる分は他所に転属している。

撮影:下京区総合庁舎前
「小型バス運行モデル実験中」ステッカーが側面方向幕下に貼ってあった。

②南8号系統を中型バスから小型バスへ変更
南8号系統は、従来中型車のいすゞエルガミオ三菱ふそうエアロミディMJで運行されていた。これを輸送実態に合わせて小型車の三菱ふそうエアロミディMEで運行する。さらに基本毎時1本から40分間隔(2時間で3本)に増発した。担当は変わらず、横大路営業所京阪バス委託が運行する。エアロミディMEは運行に必要な3台が導入されたが、予備車が含まれていないので、検査時等は他の中型車で代走していたと思う。

撮影:竹田駅東口
「小型バス運行モデル実験中」ステッカーが側面方向幕下に貼ってあった。

③84号系統を中型バスからジャンボタクシーへ変更
84号系統は、従来中型車のいすゞエルガミオで運行されていた(一部は大型車)。これを輸送実態に合わせて乗車定員8名のジャンボタクシーで運行する。これは小型バスよりさらに運行コストを削減することが目的。運行本数は、従来の毎時1本以下から倍以上に増発された。ジャンボタクシーを使用するので、84号系統は横大路営業所京阪バス委託からエムケイに移管された。

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撮影:京都駅八条口アバンティ

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撮影:京都駅八条口アバンティ
乗客の多い時間帯では2台で運行するケースもあった。

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路線図は側面上部に貼ってあった。

④臨南5号系統を中型バスからジャンボタクシーへ変更
臨南5号系統は、従来中型車のいすゞエルガミオ三菱ふそうエアロミディMJで運行されていた。これは地下鉄烏丸線竹田延伸で旧16号系統が廃止され、路線バスが運行されなくなった地区からの陳情で設定されたという事情があり、南5号系統の間合いで運用していた。運行本数も数時間に1本と、使い勝手がいいとは言えず、利用客も多くは無かった。これをジャンボタクシーで運行することで1便毎の運行コストを削減し、毎時1便に増発して利用しやすくする。ジャンボタクシーを使用するので、横大路営業所京阪バス委託から弥栄自動車(ヤサカタクシー)へ移管された。また南5号系統とは運用が分離された。

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撮影:竹田駅東口
発車時刻まで待機している所。

⑤42号系統の一部便をジャンボタクシーで運行
乗客の少ない始発便・最終便及び最終1本前の増発便を、輸送実態に合わせて弥栄自動車(ヤサカタクシー)担当のジャンボタクシーで運行する。

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撮影:京都駅前

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撮影:洛西口駅

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撮影:京都駅前

⑥43号系統の一部便をジャンボタクシーで運行
乗客の少ない最終便及び最終1本前の増発便を、輸送実態に合わせて弥栄自動車(ヤサカタクシー)担当のジャンボタクシーで運行する。

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撮影:四条烏丸

当初は営業係数の高い31・65号系統も、利用客の少ない始発・最終便のジャンボタクシーか小型バスによる運行も検討されたようです。しかし岩倉操車場までの回送距離が長いので、あまりコスト削減にならないためか、今回の実証実験対象とはならなかった。
ジャンボタクシーは法規上の乗車定員10名のハイエースを使用しており、本来なら運転手を除き乗客が9人乗車出来るが、路線バスとして運行するため助手席を取り外して運賃箱と案内装置を搭載しており、そのため乗車できるのは8名となっていた。法規上立席が認められないため、それ以上の乗車が見込める便は最初から2台で運行したり、途中停留所で積み残しが発生したら、電話連絡で続行便の応援を頼んだりしていた。しかしそうなるとかえって輸送コストが高くなってしまう問題点が出できた。

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ヤサカタクシーの運賃箱設置部

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MKタクシーの運賃箱設置部
どちらもハイエース(H100系)なので、設置方法は同じ。

余談だが、2005年9月~2006年3月に立命館大学衣笠キャンパスの学生輸送実験が行われたのは、今回の小型バス・ジャンボタクシー実証実験が開始され、横大路営業所京阪バス委託の受け持ちが減ってしまったので、人員・車両に余裕が出来たこともあるだろう。

 B.2006年4月~2007年4月 

2006年4月1日に一部路線で経路変更が行われた。実験内容自体は変更されていない。

①南8号系統の経路変更
従来は中書島を経由しなかったが、それでは不便なので、横大路車庫前~国道大手筋~西大手筋~中書島経由に変更された。竹田駅東口行のみ京阪中書島・伏見港公園も経由する。これにより蘇生会総合病院への通院の足が確保された。

②84号系統の一部停留所新設・移設
近鉄鳥羽駅口バス停を新設した。また阪急西京極(北行)バス停を移設した。

③臨南5号系統の停留所新設と経路変更
JR藤森駅前広場にバス停を新設して乗り入れるようにした。

 C.2007年4月~2008年1月 
実験内容が一部見直されている。

①16号系統で運用の小型バス車両変更
従来の三菱エアロミディME4台から、2006年度導入車の日野ポンチョ4台へ変更。三菱エアロミディMEは後述の84号系統へ転用。サイズ的にはほぼ同一だが、ポンチョの方が定員が多いためだろう。

撮影:京都駅前
「小型バス運行モデル実験中」ステッカーが側面に貼ってあった。

②南8号系統をエムケイに移管
横大路営業所の一部をエムケイに委託し、配属された小型バスによる運行を標準とする。小型車の三菱ふそうエアロミディMEを、京阪バス委託からエムケイ委託へ転属させ、新たに導入した日野・ポンチョも配置する。さらに40分間隔(2時間に3本)からやや間隔を広げ、45分間隔(3時間で4本)へ変更した。

③84号系統を小型バス・ジャンボタクシー併用
横大路営業所の一部をエムケイに委託し、配属された小型バスによる運行を標準とする。ジャンボタクシーによる運行は平日の一部便のみとし、休日ダイヤでの運行は無い。また小型バスでの運用に伴い、京都外大前での折り返しが困難になるため、四条葛野大路→庚申前→京都外大前→四条葛野大路を一方循環経路で延長した。

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撮影:京都駅八条口アバンティ
16号系統用だったエアロミディMEを、84・臨南5号系統用に転用した。

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撮影:京都駅八条口アバンティ
ジャンボタクシーで運行するのは一部の便のみ。誤乗防止のためか、今回から車体は白一色となった。添付するステッカーは若干控えめになっている。

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乗降扉の無い右側面は、トラフィカ京カードをPRしていた。

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次停留所案内装置は、通常の路線バス車両では運転手用のモニターとなっている小型の表示機を使用していた。

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小型車両に設置してある路線図の一部を車内に貼っていた。

④臨南5号系統の小型バス・ジャンボタクシー併用
横大路営業所の一部をエムケイに委託し、配属された小型バスによる運行を標準とする。ジャンボタクシーによる運行は平日・土曜の一部便のみとし、休日ダイヤでの運行は無い。ジャンボタクシーの担当も弥栄自動車からエムケイに変更された。

⑤19・20・南3号系統の一部を小型バスで運行
横大路営業所京阪バス委託に配置された小型バス(日野・ポンチョ)で、利用客の少ない時間帯の一部便を運行する。

⑥42号系統のジャンボタクシー運行を終了
ジャンボタクシーでは積み残しが発生するので、全便中型バス以上での運行となる。

⑦43号系統のジャンボタクシー運行を終了
ジャンボタクシーでは積み残しが発生するので、全便中型バス以上での運行となる。

ジャンボタクシーによる運行便の減少に伴い、弥栄自動車(ヤサカタクシー)が実験から撤退し、エムケイ(MKタクシー)のみの運行となる。

 D.2008年1月以降の実験終了後 
2008年1月改正で実証実験は終了した。ジャンボタクシーは乗車定員が少ないことがネックとなり、本採用は見送られた。

①16号系統の運用を小型バスと中型バスの併用化
2008年1月改正で、日野・ポンチョが1台横大路MKに転属して3台となり、エルガミオと併用して運行する。

②南8号系統の移管
横大路京阪から横大路MKへ移管された。すべて小型バス(エアロミディMEとポンチョ)による運行なのは従来通り。

③84号系統のジャンボタクシー運行終了
ジャンボタクシーによる運行は終了し、すべて横大路MKの小型バス(エアロミディMEとポンチョ)による運行となる。
また地下鉄東西線太秦天神川駅延伸に伴い、太秦天神川駅前発着に変更された。ただし地下鉄延伸が前倒しされた関係で、駅前広場の開業が間に合わなかったため、暫定的に変電所駐車場を仮ターン地としており、停留所は周辺道路に設置されていた。

④臨南5号系統のジャンボタクシー運行終了
ジャンボタクシーによる運行は終了し、すべて横大路MKの小型バス(エアロミディMEとポンチョ)による運行となる。

⑤19・20号系統の小型バスでの運行を終了
19・20号系統の一部が小型バスで運行されていたが、同改正をもって終了した。

⑥南3号系統を小型バスで運行
横大路京阪から横大路MKに移管し、小型バス(エアロミディMEとポンチョ)による運行となる。ただし平日朝に一部横大路阪急の中型車限定便がある。

⑦70号系統を新設し、すべて小型バスで運行する
太秦天神川駅前に移転した右京区総合庁舎のアクセス路線として70号系統を新設した。途中狭隘区間があるため、専用車として洛西営業所近鉄バスへ日野・ポンチョを新製配置した。