エムケイタクシー路線バス参入問題

エムケイタクシー路線バス参入問題

京都に本社のあるタクシー会社エムケイは、タクシー業界での規制緩和のきっかけを作り、低運賃や運賃の多様化、従来は疎かにされてきた乗務員の接客レベル向上等、マスコミには「業界の風雲児」とも呼ばれる存在です。
2000年代以降推進された規制緩和により、新規参入のハードルが下った事業が多数あり、全国各地でツアーバスや路線バス事業への新規参入が相次ぎます。京都市内でもタクシーや貸切バス事業を行っている弥栄自動車がヤサカバスを設立したり、冠婚葬祭関連の送迎を行っているセレモニー観光(→京都急行バス→プリンセスライン)が、プリンセスラインの愛称で路線バス事業への新規参入を果たしています。
エムケイ京都市内での路線バス参入を計画し、2002年頃には京都駅八条口を起終点に東大路通北大路通西大路通を循環する路線の概要も発表しています。運賃は当時の市内均一区間220円に対し、200円と低価格を予定していました。また2004年夏には、三菱ふそうエアロミディMJを27台購入して車両も用意しています。京都駅八条口を起終点とするのは、自社のタクシー乗り場があるためで、京都駅前への乗り入れは、京都市に拒否されることは必須なので、最初から諦めていたのでしょう。
しかしこの計画は、京都市交通局は勿論、他の交通事業者や京都商工会議所等からも難色を示されます。特に京都市交通局としては、循環系統等の黒字で周辺路線の赤字を補填する収益構造のため、エムケイに黒字路線と競合する路線に参入されてしまうと、この経営モデルが崩れてしまい、赤字路線を譲渡か廃止する必要が出てきます。
結局、京都市長の諮問機関『京都のバス事業を考える会』の最終答申に基づき、京都市交通局の既存路線の一部の運行を小型バス・ジャンボタクシーで行う「代替モデル実証実験」へ参加することで決着し、循環路線バス事業計画は取り下げました。お上に逆らうイメージの強いエムケイですが、セレモニー観光(プリンセスライン)のように、京都市交通局に喧嘩を売る形での参入を強行しなかったのは、エムケイのせいで市バスの閑散路線が削減や廃止されるようなことがあると、ヒール(悪者)のイメージが付いてしまい、今までのお上に逆らう庶民の味方ではなくなってしまうことを危惧したのでしょう。これによって既存のタクシー事業に影響を与えるのが怖かったのかもしれません。またバスとタクシーを融合させることで、コストダウンを図りつつ閑散路線を維持していくという、従来からエムケイが主張してきたことが実証実験として行われ、そこにエムケイも参入出来たこと、路線バス事業用に用意していた車両は、一部を除き京都市バスが使用することで合意したこともあるでしょう。
実証実験は2005年7月から開始され、エムケイは84号系統を担当し、全便ジャンボタクシーで運行していました。2007年4月より実験内容が見直され、エムケイは横大路営業所の一部を業務委託されるようになります。84号系統と臨南5号系統が、小型車エアロミディMEと一部便をジャンボタクシーの併用運行となりました。
2008年1月改正でジャンボタクシーによる運行は終了し、市バス車両のみの運行となりました。
2014年改正時点では、16・84・臨南5・南8号系統を担当し、三菱エアロミディMEが7台と、日野ポンチョを7台の合計14台が委託配置されています。
前述のようにエムケイが用意していた三菱ふそうエアロミディMJは27台ありましたが、今後も特定輸送等で仕様する7台を残し、20台は一旦三菱ふそう販売が買い戻し、一部を京都市バス仕様に変更したのち、京都市交通局にリースされており、横大路営業所阪急バス委託に配置されています。横大路営業所エムケイ委託の車両が不足した際は、元エムケイ車両が貸し出されることもあります。